3 慢性腎不全と看護


 慢性腎不全は、原疾患の種類に関係なく腎機能障害が進行し、体液の恒常性維持に破綻を来しながら、やがて末期の腎不全に至る病態を意味する。
 慢性腎不全から透析導入に至った原疾患は表2に示すとおりであり、腎不全の進行(増悪)因子としては、高血圧、高タンパク・低カロリー食、高リン食、高脂血症、高血糖が挙げられる。また、急性の増悪因子としては、感染症(尿路感染症)、手術・分娩・出血、薬物(抗生物質、造影剤、鎮痛剤、解熱剤)、脱水、急激な血圧低下、急激な運動、尿路閉塞が挙げられる。

表2 1999年度導入患者原疾患
第1位  糖尿病性腎症
第2位  慢性糸球体腎炎
第3位  腎硬化症
第4位  嚢胞腎
第5位  SLE(全身性エリトマトーデス)
第6位  慢性腎盂腎炎
第7位  急速進行性腎炎
第8位  悪性高血圧
第9位  アミロイド腎
第10位  腎尿路悪性腫瘍
第11位  痛風腎
第12位  閉塞性尿路疾患


1. 慢性腎不全の病期分類

 慢性腎不全は、腎臓の最小単位である細胞が徐々に破壊されていくため、腎臓は徐々に働かなくなる。従って、現時点では慢性腎不全を治すことはできない。しかし、腎臓が悪くなるスピードを緩やかにし、尿毒症症状が現れるのを遅らせることは可能である。前記した高血圧や感染症などの腎不全の増悪因子・合併症は、腎不全悪化の進行を加速させるため、その治療により発生を予防することが尿毒症の進行を遅らせ、透析療法への導入を遅延させる重要なポイントになる。
 慢性腎不全の病期は、クレアチニン・クレアランス値、尿素窒素値、臨床症状を参考にして決められるが、クレアチニン・クレアランスを基にすると、次のような病期に分類することができる。これは、食事療法の程度を考えたり合併症対策を考える上で大切になってくる。

@腎予備能力低下期(クレアチニン・クレアランス60〜80ml/分)
 クレアチニン値(0.5〜1.0mg/dl)や尿素窒素(10〜22mg/dl)は正常値のままである。血液の電解質や酸塩基平衡にもそれほど異常は出ない。臨床症状はないが、腎不全の進行(増悪)因子によって腎機能低下が明らかになり、悪化する時期である。

A腎機能不全期(クレアチニン・クレアランス40〜60ml/分)
 クレアチニン値(1.3〜2.0mg/dl)や尿素窒素値(25〜30mg/dl)はわずかに上昇する。カリウム値(5.0〜5.5mEq/l)、リン値(4.0〜4.5mg/dl)は上昇し、カルシウム値(7.8〜8.2mg/dl)、重炭酸(18〜22mEq/l)は低下するなどの異常が出現する。夜間尿、高血圧、浮腫、貧血、代謝性アシドーシスが現れるが、自覚症状はあまりない。

B腎不全期(クレアチニン・クレアランス20〜40ml/分)
 クレアチニン値(2〜6mg/dl)、尿素窒素(40〜80mg/dl)、カリウム値(5.0〜6.0mEq/l)、リン値(4.5〜5.5mg/dl)などは上昇する。カルシウム値(7.5〜8.0mg/dl)、重炭酸(13〜20mEq/l)などは低下するなどの異常を認める。
 多尿、貧血、代謝性アシドーシス、腎萎縮、骨軟化症がみられる。全身倦怠感、食欲不振、嘔気、頭痛、浮腫、息苦しさ、高血圧、めまい、手足の筋痙攣、掻痒感などの尿毒症症状を呈することがあり、腎臓は縮小してくる。
 また、透析導入の準備のためシャント作成を検討する時期でもある。

C尿毒症期(クレアチニン・クレアランス10〜20ml/分以下)
 クレアチニン値(6mg/dl以上)、尿素窒素(100mg/dl前後)、カリウム値(5.0〜6.0mEq/l)、リン値(4.5〜5.5mg/dl)などは上昇する。カルシウム値(7.5〜8.0mg/dl)、重炭酸(13〜20mEq/l)などは低下するなどは低下し,代謝性アシドーシスの進行(ph7.25〜7.35)などの異常を認める。貧血,骨軟化症はほぼ必発し,腎臓は萎縮してくる。
 全身倦怠感,食欲不振,嘔気,浮腫,息苦しさ,高血圧,めまい,手足の筋痙攣,掻痒感,下肢灼熱感・イライラ感などの尿毒症症状が認められれば、透析療法が必要になる。

D透析療法期(クレアチニン・クレアランス10ml/分以下)

 腎臓の萎縮が認められ、腎嚢胞などが見つけられることがある。透析療法を反復して実施している限り、尿毒症症状は現れない。しかし、貧血や骨軟化症はエリスロポエチンや活性型ビタミンDを服用しない限り合併症として残る。


2. 慢性腎不全患者の看護のポイント

1)腎予備力低下期から腎不全期

 この時期は、検査データの値は変化してくるが自覚症状はあまりないので、本人は知らないまま病状が進行するか、知っていても軽視されて自己管理を怠り、病状が進行することも多い。
 タンパク尿の出現は比較的早期に起こるので、この時期から専門医を受診し、定期的に検査・治療を開始することが必要となる。そして、尿毒症期へ移行するまでの間、腎臓に負担をかけないように安静と食事療法、腎不全の増悪因子・合併症を避けることが重要である。

2)尿毒症期


 生活管理、食餌・薬物療法を行っても徐々に腎不全は進行してくる。この時期から1日尿量が減少してくるため、飲水量は尿量に合わせて制限することが必要になる。また、透析療法に対しての心構え、シャント造設の必要性を説明し手術を行う。また尿毒症症状も出現してくるので、その主な症状の看護のポイントについて述べる。

@倦怠感
 原因としては貧血、脱水、低ナトリウム血症、アシドーシス、低血圧などが挙げられ、貧血や脱水は腎機能の低下を来すため、造血剤の投与や適切な水分補給が必要となる。




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