のと鉄道(穴水〜蛸島)




 国鉄末期に廃止予定とされ、第三セクター方式で存続された鉄道の大半は都市部から離れた位置に存在し、そのほとんどが赤字に苦しんでいる。

 もともと利用者の多くない路線ばかりであり、経営が厳しいのは明らかではあったのだが、観光路線を標榜する路線の集客力がさえないのはちょっと意外に思うこともある。

 結局のところ、第三セクター鉄道のなかで黒字、または収支トントンの状態を保っているのは、北越急行、智頭急行のような幹線・準幹線路線と、愛知環状鉄道、甘木鉄道のような地方都市近郊路線である。もともと人口密度の低い過疎地域の路線が厳しいのは当然なのである。

 そのためそういった路線はイメージアップを図り、観光客の取り込みを狙った。トロッコ列車やSL列車の運行、リゾート車両の導入、駅舎の改造などが行われ、一定の成果が上がっている。

 だが、観光利用による収入は流動的で、やはり地元の住民の利用があってこそ経営が成り立つものであるということを結果的に証明するような実績しか残せていないことも事実である。

 のと鉄道能登線(穴水〜蛸島 61.0Km)も、観光鉄道化を目指しながらも振るわなかった路線の一つである。

 のと鉄道は、特定地方交通線に選ばれ廃止予定とされた国鉄能登線を引き継いで1988年に開業、後にJR七尾線の末端区間である(七尾〜輪島 53.5Km 七尾〜和倉温泉はJRと共通運用)が移管された。

 JRから急行「能登路」が乗り入れ、自社の保有するリゾート車両による急行「のと恋路号」を運行し、観光客の誘致を図ったが、依然経営は厳しく、2001年4月1日、七尾線(穴水〜輪島)が廃止され、能登線の急行も全廃された。そしてついに、能登線も2005年4月1日をもっての廃止が決定した。

 去る2004年7月26日、6年ぶりにのと鉄道を訪ねた。

 のと鉄道の蛸島行き2両編成のディーゼルカーは、8時5分に七尾を出発した。座席は大体埋まっており、意外に乗客が多いという印象を受けた。

 設備をJRが保有しているのと鉄道七尾線(七尾〜穴水)の区間を過ぎて廃止予定になっている能登線の区間に入ってもまだ乗客はそれなりに残っており、4人ボックスに1〜2人は乗っている。

 入場券がカップルによく売れるという恋路駅、駅前に縄文時代の有名な遺跡のある縄文真脇駅など、観光客の興味をそそるような駅も存在する。

 以前乗車したときには九十九湾小木までしか行かなかった。そこから先は未知の区間。

 海岸の近くを走る区間も多く、車窓から能登島が見えることもある。おおむね景観は優れているのだが、並行する道路のあまりの立派さに少々ゲンナリする。多額の税金が投入されたことに疑いはないが、その理由には思い当たるものがある。

 能登半島先端にある珠洲市はかつて原発の建設予定地とされていたが、電力需要の伸び悩みにより最近になって事業凍結が決定した。とはいえ、建設計画が起こってから珠洲市には大量の税金が投入され、こうした道路の整備等に充てられたのは事実なのだろう。こうした道路の整備が鉄道の必要性をなくす一因になったことは間違いない。

 実際、乗客は高齢者や中高生が中心で、家族連れや若者の姿はあまり見られない。観光客も自分を含めて数えるほどしか乗っていない。

 珠洲のひとつ前の飯田駅でほとんどの乗客が降りた。こちらのほうが珠洲市の中心部に近い模様。

 10時31分、蛸島駅に到着。乗車記念証を配布していた利用促進団体のにーちゃんに「本当に廃止されるんですかね?」と訪ねると、「多分…廃止でしょうね」と諦めモード。

 本当は折り返しの列車が2時間来ないのだが、臨時で珠洲行きが運行されており、それに乗ることが出来た。

 珠洲駅構内には、かつて急行「のと恋路号」に使用されていたリゾート車両「NT800形」の廃車体が留置されている。以前乗車したことがあるのだが、こういった姿で再会するのは本当に寂しい。十分にまだ走れる状態に見えるのだが、もう使い道はないのだろうか…

 珠洲で駅前をぶらぶらした後昼食をとり、穴水行きの列車に乗って珠洲を後にした。

 帰りも利用者はそこそこいたが、行きに比べると少なめ。やはり高齢者が多い。

 穴水では乗り換え時間が少なかったため、すぐに次の七尾行きに乗り、七尾まではあっという間だった。


 普段は廃止予定の鉄道に乗ると、廃止されるのがとても惜しくなるのだが、廃止されるという事実にこれほどまでに納得してしまう鉄道は珍しい。利用者が特別少ないという印象を受けたわけではない。だが、並行する立派な国道を見てしまうと、「役目は終わった」と感じてしまうことも事実であり、また、駅や踏切などの設備も何となく整備が行き届いていないという印象が強い。

 そして何より、能登半島という観光資源を抱えながらそれを生かすことが出来なかった点からも、廃止やむなしの感は強まってくる。もともと人目を引く観光地ならともかく、そうでない場合は観光地に寄りかかるのではなく、むしろ率先して観光誘致を図り、魅力的な観光地に仕立て上げるよう試行錯誤するべきではないのだろうか。

 廃止は惜しまれるが、健闘したがやむなく…とは思えないところに一抹の寂しさを覚える。



蛸島駅にて

珠洲駅に留置されているNT800形