|
鉄道というものは、毎日運行されているのが常識と思っている人も多いことだろう。日本の鉄道の運行本数の多さとダイヤの正確さは、そういった日本人の感覚を「当たり前」にしている。だが世界へと目を向けてみると、1週間に1本のみ運行(しかも複線)なんてこともある。 有田鉄道という鉄道会社がある。JR紀勢本線の藤並と金屋口を結ぶ5.6kmの小さな鉄道だ。ここは、日本で唯一の休日全便運休鉄道である。 この有田鉄道は、この地域の特産物であるミカンを輸送する目的で1915年に湯浅海岸〜下津野が開通、1916年に下津野〜金屋口が開通し、全線9.2qだったが、戦時中に不要不急路線として1944年に湯浅海岸〜藤並間が運休、1959年に正式に廃止された。貨物営業も1984年に廃止されており、現在では1日2往復、平日の通勤、通学のバスの補助のような形になってしまった。 この地域における有田鉄道の存在感がいかなるものかを表す写真がある。
これは和歌山駅構内にあった観光案内版だ。写真中央の観覧車のすぐ左にある駅が藤並である。この写真の中にはないが、和歌山は加太の右のほうにかかれている。お分かりとは思うが、藤並から出ているはずの有田鉄道はかかれていない。なお、藤並の先、御坊から出ている全線2.7キロで日本一短い私鉄として有名な紀州鉄道は、今は予備になっている旧型車両のイラスト付きで載っている。要は、有田鉄道はそういう存在なのである。 鉄道ファンの間でどれだけ有名であっても、さすがに一日2往復で休日運休では観光案内版には載せられないのだろうか。それにしてもすごい扱いである。 ワシが乗りに行ったのは去る8月28日。日記にも書いたように11時3分に藤並に着いて、そこから11時6分発の金屋口行きのバスに乗った。次の金屋口行きの列車は最終の12時ちょうど発で、これに乗るととても家には帰り着かない。ここは金屋口に行ってそこから列車で藤並に戻ることにする。 小型のマイクロバスだった。これで運びきれるのだからこの区間に必要な輸送力がいかほどのものか想像に難くない。バスは線路と並行する道を走る。といっても線路は注意して見ないと分からない。一応途中で1ヶ所踏み切りがある。 金屋口に着いたのは11時19分。切符は買わなくても車内で精算できるのだが、ここはわざわざ切符を買うことにする。金屋口までの運賃は340円。ペラペラの紙だったのだがそれもいい。 出発まではまだ15分ほどあるため、構内で撮影に励む。樽見鉄道から購入した現在の主力車両ハイモ180-100型、車庫のほうに走ってキハ58を撮る。運がよかったのか、それともいつものことなのかは分からないが、車庫から出ていた。雨が降っている中、使用しているフィルムの感度が100というひどい状況での撮影となった。 11時35分にレールバスは出発した。乗客は地元の人らしき人1人と鉄道ファンと思しき人2人にワシである。横に赤いディーゼル機関車が見える。岡山県の水島製油所専用線で使われていたものを引き取ってかつて貨物用に使っていたDB20として復元したものらしい。他にも有田鉄道は昔の車掌車や貨車などを展示保存している。 それにしても揺れる。線路は細く、草が生い茂っている。よくこんなところを走れるなと感心してしまう。伸びっぱなしの草が車両の側面に当たる。沿線の踏み切りは壊れているのか、職員らしき人がが旗を振って誘導する。遮断機は下りていない。凄いとしか言いようがない。 途中の下津野から2人乗ってきた。運転手とは顔見知りのようで、なにやら話していた。 藤並に着いたのは11時49分。たった14分の小さな旅だった。 この写真を見て欲しい。
金屋口駅付近から撮った写真だが、奥へ続いている草に覆われている線路が本線である。この上を走ったのかと思うと怖い。ちなみに右側の赤い機関車がDB20。 有田鉄道のような地方のローカル鉄道の多くは危機的な状況である。京福電鉄永平寺線は廃止、くりはら田園鉄道と北海道ちほく高原鉄道は存廃の結論を2003年度中に出すらしい。そのなかで有田鉄道は徹底的に切り詰めることで何とか鉄道を保ってきたが、それも長くは続かない。ついに今年中に廃止になるという。昔からおもろそうな私鉄だと注目していたが(知ったのは確か4年くらい前)、残念としか言いようがない。
地元が保存鉄道化する動きがあるそうだが、残念ながらその場合でも交通機関としての鉄道の存在は無理であろうし、必要性が薄くなってしまっている。通勤、通学に関してもバスで十分なのだ。もともとJRの末端輸送だったこの鉄道、バスに転換しても何も問題がおこらないというところまでいってしまった。 そしてこの保存鉄道だが、今まで有田鉄道が保存鉄道に関して果たしてきた実績を考えるとこれは大いに期待できるものである。ふるさと鉄道協会がさまざまな保存鉄道の活動を有田鉄道において行っており、たとえば、前述したディーゼル機関車DB20の復元もふるさと鉄道保存協会の方によるものだという。さらに、過去にも多くのイベントが開かれたということで、もし保存鉄道かが決定すれば、日本ではまだ珍しいボランティアによる鉄道の保存が実現するかもしれない。さらに、日本中から保存目的で車両が集まってきたらなおおもしろい。 これがワシの戯言とならずに、実現することを願う。 現在の主力車両、ハイモ180-100 予備車のキハ58。両運転台となっている。
|