フライングタイガースで有名な第23FGの指揮を とっていたRobert L. Scott大佐は、 1942年7月末、衡陽上空を単独哨戒飛行中に日本軍の九九双軽と2機の護衛戦闘機に 遭遇し、空戦の後これらを撃墜する。

着陸後、大佐は中国人の 情報士官に連れられて墜落現場に赴き、亡くなった日本軍戦闘機パイロットの 遺品調査に立ち会う。ふと、遺品の中から泥まみれになった身分証が出てくる。 自分が撃墜した日本人パイロットの 写真に加え、名前、出身地などが記されているようだ。

「こやつも、あなたと同じ 大佐だったようですね」と言われ、先ほど来、亡くなった敵の パイロットに哀れみの情を覚えこそすれ、まったく勝ち誇った気持ちに なれなかった大佐は、そそくさと身分証を情報士官に返す。と、その拍子に 身分証の間からひらひらと路上に落ちた写真が1枚。拾い上げてみると、 それは亡くなったパイロット、その妻、そして間に挟まれて両親に手をとられた 幼い娘の家族写真であった。娘は大佐自身の息子と同じ年頃であろう。 写真の裏には、何やら日本語で走り書きもしてある。

子供の写真に衝撃を受け、いたたまれなくなって一人先に 車に戻った大佐は、ほとんど無意識に自分自身の身分証 をポケットから取り出す。 そこには自分の妻と息子の写真がはさまれており、裏には、

"Our hearts fly with you.
Our love awaits your landing."


という、何度も繰り返し読んで、すっかり暗記してしまった妻の言葉が 記されているのであった・・・

(Eric Hammel著 "Aces against Japan"より)